เข้าสู่ระบบ【ほのか視点】
湊と知り合ったのは高校に入学してからすぐの事だった。
私は人と関わるのが苦手で、そんな時に声をかけてくれたのが湊だった。 凛とした顔立ちに、神秘的な青色の瞳。 身長が高くて、優しくて。 だから、彼に告白されたときは凄く嬉しかったのを今でも覚えてる。「湊、どうしてるのかな」
あんなに酷いことをしておいて、私は今でも湊のことが好き。
私のせいで彼を酷く傷つけてしまっていると知っているのに。 それなのに、私は彼のことを未だに深く考えている。 都合のいい話だ。「はぁ、どうして私、浮気なんかしちゃったんだろ」
そんな自問自答に答えてくれる声があるわけもなく。
私は淡々と日常を消化していく。 気が付けば夏休みが半分終わっていて、登校日を迎えていた。 学校中では湊が浮気したことになってて。「湊、クラスにいない」
彼の顔を一目見たくて彼のクラスに立ち寄ったら、彼の姿は無かった。
それは当然だ。 こんな虐めを受けて学校に来たいなんて思う奴はいないだろう。「はぁ」
私が浮気をして、私が原因であんなにも酷い目に遭わせてしまっているのに。
彼の顔を見たいと思う私は本当にどうしようもない人間なんだ。「おうほのか。今日も遊びに行こうぜ」
「う、うん」
こうして、私は今日も佐山先輩とデートに行く。
そしてきっと、そのままホテルに行って自分たちの欲望を満たすんだろう。【ほのか視点終了】
「ねぇ、湊くん」
「どうしたの?」
「あと半分の夏休みどう過ごす?」
「どうしようかな。特に決まってないよ」
「じゃあ、私に宿題教えてよ。夏休みの」
「別にいいけど。小雪さんに教えてもらった方がわかりやすいんじゃないか?」
買い物に行く道中、僕たちはそんな話をしていた。
僕の予定で言ってしまえば、まるっきり空白だ。 本当はほのかと楽しい時間を過ごすはずだったのだが、その予定は全ておじゃんになってしまったためだ。「お姉ちゃんは多分忙しいだろうから」
「それもそうかもね」
小雪さんは教師。
夏休みといっても、何らかの仕事があるんだろうね。 だったら、勉強くらいは僕が教えるべきか。 こうやって僕の気分転換に付き合ってもらっている恩も返さないといけないし。「だから、教えてね? 湊くん」
「任せといてくれ」
隣で小首をかしげながら言う日向は凄く可愛らしかった。
さっきの服装からは着替えていて、水色のYシャツに白色のジーンズを穿いている。 ポニーテールにした髪には所々から綺麗な青色が覗いていて、とても美しい。「お願いしますね。湊先生」
「先生ってガラでもないんだけどね」
「向いてると思うけどな~先生」
「そうかな」
日向がそう言うのなら、本当に向いているのかもしれないな。
将来の道について考える時に参考にしよう。「今日は食材の買い出しだから、荷物持ちよろしくね。湊くん」
「任せてくれ。昨日から世話になってるんだ。荷物持ちくらいは任せてくれ」
元気に力こぶを作って見せる。
昨日しっかり夕飯を食べて、ちゃんと寝たおかげで体の調子はかなりいい。 これは完全に日向のおかげだ。「うん。頼りにしてるね。湊くん」
こうして、俺達はスーパーで買い出しを済ませて数日分の食材を買い込んで家に戻る。自分の家は隣の部屋なんだけど。
不思議と帰る気にはなれなかった。 と言うよりは、一人にはなりたくなかった。◇
「今日の夕飯はなにが良い?」
「う~ん、なんなら僕が作ろうか?」
「う~私的には湊くんに手料理を食べて欲しいんだけど」
「そういう事なら無理にとは言わないけど」
日向の手料理は凄く美味しいし、食べられるのなら食べたいけど。
居候の分際で全部の家事をやってもらうというのは、少々居心地が悪い。「う~ん、じゃあ一緒に作るって言うのはどうかな」
「一緒に?」
「うん。私、誰かと料理をしたことないし。やってみたいな~って」
「日向がそれでいいならそうしようか」
日向とキッチンに立つのは初めてだし、ついて行けるのか心配になるけど。
僕は多少料理が出来るけど、日向みたいに凄く上手いと言うわけじゃない。 必要最低限できるってだけだから、一緒に料理して足を引っ張らないか不安だな。「やた。じゃあ、準備するからちょっと待っててね。湊くんってエプロンとかつける?」
「家にあるからとってこようかな」
「わかった。鍵はあけとくから行ってらっしゃい」
「了解。すぐに取ってくるよ」
隣の自分の家にエプロンを取りに行く。
なんだか、凄く久しぶりに自分の家に帰ってきたような気がする。 だけど、日向の家に泊まらせてもらう事になってからそこまで日が経っていない。「そっか、僕って浮気されてたんだな」
部屋に入って、飾ってある彼女とのツーショットの写真を見ると胸が苦しくなる。
僕が何か彼女の良くないことをしてしまったのだろうか?「いやいや、変な事を考えるのはやめよう。死にたくなってくる」
頭をブンブンと振って、頭に湧き上がってくる雑念を吹き飛ばす。
目的のエプロンだけ取ってすぐに家を後にする。 今はこの家に居たくなかった。「おかえり湊くん。なんだか、暗い顔をしてるけどどうしたの?」
「いや、なんでもないよ。それよりもエプロンとってきたよ」
出来るだけ、明るい笑顔を自分で作って日向に笑いかける。
自分はちゃんと笑えているのだろうか。 そんな不安さえ湧き上がってくる。「湊くん、私の前では強がらなくてもいいんだよ?」
「……強がってなんか」
「嘘だね。凄く辛そうな顔してるもん。私には強がらないで」
日向の家に戻って玄関で立ち尽くしていると、彼女に抱きしめられる。
身長差があるから、彼女の顔が僕の胸に埋まっている感じだ。 だけど、こうしていると凄く元気をもらっているような錯覚に陥る。「ありがとう」
「気にしなくていいよ。私も湊くんにたくさん助けられてるんだし。お互い様だよ」
抱きしめられているから、彼女の表情は見えないけど。
声の感じから凄く優しい感じが伝わってくる。 本当に、少し前から僕は日向に助けられてばかりだ。 もう少し、自分の感情に折り合いをつけれたらちゃんとお礼をしないと。「ほら、早く一緒に料理しよ? 何かしてたら気分転換できるかもしれないだろうし」
「だね。足を引っ張るかもしれないけど、よろしくね」
「任せなさいな」
ぱっと、僕から距離を取って振り返りながら彼女はにししっと言いながら笑っていた。その顔が天使のように可愛くて、僕の心臓は高鳴りっぱなしだった。
◇
「湊くん、凄く料理うまいね」
「そうかな。あんまり自覚はないけど」
「うまいと思うよ。少なくともお姉ちゃんよりかは」
「……確か、小雪さんって家事能力皆無じゃなかったっけ」
僕の記憶の中にいる小雪さんは、家事能力が皆無だったはず。
そんな彼女比べられて、喜んでいい物なのか疑問である。「そうだよ。お姉ちゃんが全く家事ができないから私が家事を覚えたって言うのもあるし」
「そんな小雪さんと比べてうまいって言うのは誉め言葉なの?」
「もちろん。包丁を使っても指を切ってないし。そもそもキッチンに立って物を焦がしたり、お皿を割ったりしてない時点で凄いよ」
なんて低い基準なんだ。というか、小雪さんそんなことしてたのか。
家事能力が皆無にもほどがないだろうか?「……誉め言葉なんだよね」
「他意はないって。本当に湊くんは料理が上手いと思うよ」
こんな風に褒められて悪い気はしないな。
深読みしても良い事はないだろうし。 これ以上考えないようにしよう。 うん。「日向は恋人とかいないのか?」
「なんでいきなり?」
「いや、恋人とかがいたら僕がこんな風に家に上がり込むのは良くないと思って」
「いないよ。というか、出来たことないし」
意外だ。日向みたいに美人な子なら彼氏の一人や二人してもおかしくないと思うんだが。
いや、一度に二人と交際するような不埒な人間だとは思っていないが。「そうなの? なんか意外だ」
「そう? そんな事より、よそ見してると指切るよ?」
「おっと、危ない。あんまりよそ見も良くないね」
こんな感じで、僕たちは和気あいあいとしながら料理に勤しんだ。
久しぶりに作る料理は楽しかった。 いや、料理が楽しかったと言うよりは日向と話すのが楽しかった。あれからは特になんの事件も起こることなく、穏やかな日常が続いた。 学校ではそこそこ噂になったりしたけど、だからと言って特に面倒なことが起こるという事もなかった。 そして、気が付けば春休みに突入していた。 「いやぁ~私のピカピカ一年生生活も終わっちゃったよ」 「これからは日向も二年生だね」 「これからって言っても、春休み明けだけどね」 「もうすぐじゃないか」 春休みは高校の長期休暇に中でも一番短い。期間は二週間ちょっとくらいか。 「湊くんは入学式の挨拶とかで学校に行かないといけないんでしょ?」 「うん。生徒会長挨拶とかでね。春休みの後半になったら何回か学校に行かないといけなくなるし。ちょっと面倒だよ」 「それも生徒会長の仕事だから仕方ないね~」 あの一件以降は、僕のことを生徒会長として不適格と言うような人もかなり少なくなって悠々自適に生徒会活動を出来るようになった。 中には、僕のことを日向を命がけで助けた救世主なんていう人も現れるくらいで。 自分の評価が変わり続けていて、自分自身少し戸惑っていたりする。 「でも、一番の驚きは神凪さんとかじゃない?」 「……ああ」 神凪先輩と水無月先輩は僕の生徒会長としての仕事が見たいから。なんて理由でまさかの留年をしてしまったのだ。 行動力のベクトルがあまりにもイカレているけど、それはそれであの二人らしくていい。いわく、二人は庶務でいいからあと一年間よろしく頼むよ。とのことだった。 「でもさ、本当にこの半年いろんなことがあったよね」 「だね。日向と付き合う事になったり、生徒会長になったりと。いろんなことが起こりすぎて自分でも目が回りそうだよ」 「私もだよ。まさか、湊くんと付き合うようになるなんて思ってもいなかったから」 「そうなのか?」 日向が昔から僕のことを好きでいてくれたのは少し前に聞いたけど。 「だって、高校に入ったら湊くんに彼女がいたんだもん。遅かったって絶望してたんだよ?」 「それは……なんかごめん」 「湊くんが謝るような事じゃないよ。今はこうして付き合えてるから問題なし!」 「あはは。そっか」 ほのかはあの事件の後で、精神病院に送られたらしい。色んな精神鑑定を受けた結果、統合失調症と診断されて現在は入院中だ。 どうやら、周囲から向けられる視線や
「大変だったらしいな~湊」 「聞いたわよぉ~日向ちゃんを命がけで守ったそうね」 「まあね。それよりもなんでいきなり帰ってきたの?」 「そりゃあ、仕事が落ち着いたからな。年末だし」 「そうよ。仕事の方もひと段落したし」 クリスマスイブから時は流れ年末。 十二月三十日。 後一日で今年が終わるという日に二人は帰ってきた。 「お久しぶりです。海斗さん。美波さん」 「久しぶりだな日向ちゃん。俺達がいない間、湊の面倒を見てくれてありがとう」 「本当にね。かなり心配してたんだけど。こうして湊の元気そうな顔を見れるのはあなたのおかげよ」 「いえいえ。私の方が湊くんに助けられてますから」 日向は少し畏まった感じで父さんと母さんに挨拶をしていた。付き合っていることはあらかじめ伝えていたけどこんな反応をされるとは思っていなかった。 「ふふっ、ならいいけど。湊も日向ちゃんを悲しませるようなことはしちゃだめよ?」 「しないって。そんなことをするくらいなら死んだほうがマシだから」 「簡単に死のうとしないの。湊が死んじゃったら一番悲しむのは日向ちゃんなんだから」 「それは確かに。命は粗末に粗末にするもんじゃないな」 ◇ 年末に母さんたちが帰って来たことで、僕たちの怪我が治るまでが家事を担当してくれることになった。 正直ありがたい。 「なんだか申し訳ないね」 「まあ、気持ちはわかるけど僕たちは怪我をしてるし小雪さんは家事ができないし。しょうがないよ」 「早く怪我を治さないと! ねっ湊くん」 「うん。でも、無理はしちゃだめだよ? 日向が一番傷が深いんだから」 僕の傷と違って、日向の傷はかなり深い。それに加えてほのかから逃げ回っているからその分かなり悪化しているらしい。 完治まではあと最低でも一ヶ月はかかるそうだ。 「わかってる。でも、せっかくのクリスマスとか年末年始なのに何もできなくてごめんね」 「気にしなくていいよ。クリスマスや年末年始は今年が最後ってわけじゃないしさ。ちゃんと元気になって来年たくさんあそぼうよ」 「来年も一緒に居てくれるの?」 「もちろん。僕はもう日向と別れるつもりなんかまったくないからね。前も言ったけど、日向がいない生活はもう考えられないんだから」 「じゃ、約束だよ! 来年は二人でいっぱい遊ぶって」
クリスマスイブと言うのに、僕がやっていることは普段とあまり変わらない。変わったことと言えば、いつもは日向がしている家事を僕がやっているという事くらいか。 「悪いな湊。怪我をしてるのに家事をやらせてしまって」 「良いですよ。小雪さんが家事出来ないのは知ってますし」 「面目ない。いつかは覚えようと思っているんだけどな。中々時間が無くて」 「忙しいですもんね。全然気にしないでください。そこまで苦でもないので」 小雪さんが申し訳なさそうにしているのを見ながら、僕は皿洗いをしていた。 リビングのソファーで日向は座ってゆっくりしていた。 「ごめんね湊くん。本当は私がやるべきなのに」 「良いって。いつもやってもらってるし。日向が怪我をしてる時くらいは僕がやらないと」 申し訳なさそうにしている日向に笑みを向けて、僕は黙々と皿洗いを進める。 こういう単純作業はそこまで嫌いじゃない。 「ありがとね。湊くん」 「気にしないでくれ。日向は怪我が早く治るように安静にしてて」 「私の目の前であまりイチャイチャしないで欲しいんだが。まあ、いいか」 小雪さんはため息をついて、うなだれている。 大丈夫。きっと小雪さんにもいい人が見つかります。 「そう言えば、湊くんの元カノはどうなったの?」 「あれは、警察に連れて行かれたよ。流石にその後のことは分かっていないけど」 「そうなんですね。とりあえず、みんな無事でよかったじゃないですか」 「だな。あの状況で死人が出なかったのは驚きだ」 佐山も死んではいないらしいし、結果として今回の一件で死人は誰一人として出ていない。その事に感謝をしつつ。 ◇ 「ねぇ湊くん」 「どうした?」 「クリスマスプレゼントが欲しい!」 「それは良いけど、何が欲しいの?」 最近は忙しすぎて、クリスマスプレゼントを用意する時間が無かった。 でも、何か欲しいって言うなら少し遅くなっても贈りたい。 「えっとね。キスしてほしい……かな」 「……そんなのでいいのか?」 「そんなのって……酷いなぁ。クリスマスイブに恋人にキスしてほしいって言う気持ちがわかんないのかな」 「いや、わかるんだけど。もっとすごい物をねだられるのかなと思ってたから」 「そんなことしないよ。ほら、キスして? ん」 そう言って日向は目を
「いろいろ終わったね。お疲れ様。湊くん」 「お疲れ様日向」 家に帰った僕たちは日向の部屋で楽しく会話をしていた。 車いすでの移動はかなり不便そうだし、早く完治してほしいと思う。 「湊くん、その怪我大丈夫なの? その腕で私のこおお姫様抱っこしてくれてたけど」 「大丈夫大丈夫。日向が思っているほど深い傷ではないからさ」 「絶対うそでしょ。あんなに深々とナイフが刺さってたのに」 「大丈夫だって。日向を助けれたんだから、これくらいの怪我大したことないよ」 腕にナイフが刺さったくらいで、日向の命を救えるのなら安いものだ。腕が吹っ飛ばされたわけでもないし。 「あの時、湊くんが言ってくれた言葉って本当?」 「言ってた事って?」 「世界で一番大切ってやつ」 「ああ、もちろん本当だし本心だよ」 僕は日向のことが世界で一番大好きだし、大切だ。 それだけは、これから何があっても絶対に変わらないんだと思う。 「凄く嬉しかったよ。私のことを助けてくれるヒーローみたいで」 「そんな大層なもんじゃないけどね。めちゃくちゃボロボロにされたし」 目立った傷は腕の傷だけど、他にも体の至る所に大小さまざまな傷が出来てしまっている。 「それでも……だよ。私にとっては白馬の王子様みたいだった」 「日向にそう思われるのは嬉しいな。ありがとう」 「お礼を言われるような事でもないんだけど」 少し困ったような顔をしながら、日向は笑いかけてくれる。 この笑顔を見ることが出来るだけで、僕は凄く幸せを感じることが出来る。 日向が隣にいない世界なんて想像できないし、したくもない。 「生きててくれてありがとう。日向」 「こちらこそ。助けてくれて本当にありがとうね」 ◇ 「湊、ちょっといいか?」 「どうしたんですか? 小雪さん」 「いや、少し話したい事があってな。少し私の部屋に来てくれないか?」 「全然いいですけど」 クリスマスパーティーが終わり翌日。 世間ではクリスマスイブと呼ばれる日の朝に僕は小雪さんに部屋に呼び出されていた。 「まずは本当にありがとう。君がいなかったらひなちゃんは殺されていたかもしれない」 「気にしないでください。僕は僕がするべきことをしただけです」 「君らしい答えだが、気にしないのは無理だな。君は妹の命の恩人
パーティーの結果を見れば大成功だった。 僕と日向が運営に参加をしなくても、小雪さんが加わったことで円滑に運営をすることが出来ており、パーティーに参加してくれたみんなの顔も笑顔に満ちていた。 「大成功だな。おめでとう夜霧会長」 「神凪会長。ありがとうございます」 「やめてくれ。私はもう会長じゃない。普通に神凪でいいさ」 「そう……ですね。神凪先輩」 「それでいい。聞いた話によると大変だったそうじゃないか。大丈夫だったかい ?」 会場内で神凪先輩に話しかけられる。日向も会場内にはいるけど休憩中の小雪さんに車いすを押してもらっているので、今の僕は一人だった。 「大丈夫……とはお世辞にも言えませんね」 「だろうね。その両腕、痛むかい?」 「少しは。でも、日常生活に支障をきたすほどではないですし。ちゃんと動きますしね」 僕は神凪先輩に安心してもらえるように、腕をプラプラ振って見せる。ほんの少しだけ差し込むような痛みが走るけど、表情を取り繕う。 「名誉の負傷と言う奴だな。誇ると良いさ。君は幼馴染君にとっての英雄になれたのだから」 「僕のせいで今回の事件に巻き込んでしまったという面もありますから。素直に喜ぶ権利なんか僕にはないですよ」 「君は相変わらず物事を難しく考え過ぎる節があるな。もっと楽観的に生きると良い」 「難しいですね。今までこういう考え方で生きてきたので」 僕がもっと付き合う相手をしっかり選んでいたなら、日向に怖い思いをさせずに済んだのに。 いや、そうなってしまったら僕と日向が付き合うという未来もなかったのかもしれない。 「そうか。いや、そう言う返答も含めて君らしいと言えば君らしいな。時間を取らせてすまない。私はもう行くよ」 「そうですか。今日は来てくださってありがとうございました」 神凪先輩はニコニコしながら、水無月先輩を引き連れて会場を後にした。 なんだか、ここに来てようやく一息つけるようなそんな気がする。 「やっと、一休みできる」 「そうはいかないね。うちの妹が君をご指名だ。ここの運営は私たちに任せて今日はもう家に帰ると良い。正直疲れたろ?」 「そうですね。では、お言葉に甘えてそうさせてもらいます」 僕は小雪さんに一礼をして、今も忙しそうに作業をしている隆介と秋奈さんに声をかけてから、日向
「お前、大丈夫なのか? 今日くらいは休んでも誰も文句は言わないと思うんだけど」「大丈夫。せっかく生徒会のみんなで準備したんだから、台無しにしたくないし。傷はそこまで深いわけじゃないからさ」 翌日、僕は終業式を終えて生徒会室で今日の夜におこなわれるクリスマスパーティーの準備をするために集まっていた。「そんな怪我したなら本当に休んでいていいんですよ? パーティーの運営位なら私と隆介先輩で大丈夫ですし」「そう言うわけにはいかないよ。僕も今日まで準備してきたんだし最高の形で成功させたいって思ってるから」「私もそう思ってるから、二人ともそこまで気にしなくてもいいよ。私も湊くんも見た目よりはボロボロじゃないから」「いや、日向さんはそもそも車いすだし。湊に至っては腕を包帯でぐるぐる巻きにされてるし」 ジト目で隆介に見られる。確かに、今の僕たちの状態はお世辞にも健康体とは言えなかった。 僕の両手はあまり使えないし、日向に至っては車いすがないと移動できないほどにボロボロにされていた。「ぐぬぬ」「そう言われると、私達も何も言い返せないかも」「夜霧先輩と日向さんはゆっくりパーティーを楽しんでください。私達でちゃんと運営しますから二人は会場で楽しんでいてくださいよ」 秋奈さんが僕たちに気を使って微笑みかけてくれる。 きっと、これ以上僕たちは何かを言っても運営に携わる事は不可能だろう。 ならば、二人の言葉に甘えて僕たちはパーティーを楽しんだ方が良いのかもしれない。「二人の言う通りだぞ。怪我人はおとなしくパーティーを楽しめばいい。今日のパーティーは私が二人の協力に当たるから」「小雪さん……いいんですか?」「当たり前だ。妹を助けてくれた命の恩人なわけだしな。と言うわけで二人とも。今日は二人の代わりに私が協力するからよろしく頼むぞ」「はい。お願いします望月先生」「お願いいたします」 生徒会室に入ってきていきなりそう言う小雪さんに隆介と秋奈さんの二人が揃って頭を下げる。 どうやら、僕と日向は確実にパーティー参加はするけど運営側に回ることはできないようだった。「そう言うわけで二人とも。今日は大人しくパーティーに参加だけすること。運営は私たちに任せてくれていいからゆっくりしろ」「だって。湊くん。どうする?」「ここまで言われたらそうするしかないだろ? あり